親鸞聖人のご生涯をとおして

 人間としてこの世に生まれてきたからには、いつの日か、ある日例外なく突然死ななければなりません。人の死については昨日も聞き、今日も見聞きしているのですが、死をほんとうに自分のこととしてとらえることは難しいようです。
親鸞聖人の臨終はいかがだったのでしょうか。
聖人は晩年、京都から関東の弟子たちに往生浄土が近づいたことについてお便りをしてみえます。現代の人に最もわかりやすいのが、高田派の「親鸞伝絵(でんね)」や本願寺派の「御伝鈔(ごでんしょう)」でしょう。
それらを要約し意訳してその内容を紹介しましょう。
聖人は弘長2年(1262年)いささか、いつもと違って健康がすぐれなくなられ、それからは、口に世間のことなどを話さず、余分なことを語らず、ただ、仏恩の深いことだけを語られ、もっぱら念仏称名の声がたえることなく、11月28日のお昼過ぎ、ついに亡くなられました。御歳90歳でしたと記録されています。
ご臨終の枕辺には数少ない直弟と末娘の覚信尼さま、次弟の尋有さまがおられたぐらいのさみしく静かな場であったと思われます。
さて私たち真宗のみ教えを心の糧として生きる者は、この聖人のご生涯をしのび、ますます聞法の道に精進して参りましょう。