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特別声明公演真宗高田派 ~親鸞聖人讃嘆のつどい~ 報恩講式

平成21年4月2日(木)午後2時より、特別声明公演真宗高田派~親鸞聖人讃嘆のつどい~報恩講式が東京国立劇場にて開催されました。
荘厳な雰囲気の中、法主殿の声に合わせ32人の出席者が声明を唱え、1600人分の客席がほぼ満席となり、2時間にわたり行われました。
皆様のご協力をもって無事盛況のうちに終了することができました。心から感謝しております。

高田声明公演に寄せて  法主 常磐井 鸞猷

 真宗高田派の声明と云えば、一般には、在家の家々でも夕時に唱えられる「文類偈」がその哀愁を帯びた曲調で「文類さん」と親しまれ、派外にもよく知られています。寺院住職の唱えるものとしては、三重念佛和讃等がありますが、何と言っても、年に一度の報恩講に読誦する「式文」を中心とする「報恩講式」の声明が最も代表的なものでしょう。
 高田声明は天台声明の流れを汲んでいますから、「伽陀」等は天台伝来のままを伝えていますが、「式文伽陀」は独自の節で歌われています。また「引声念佛」は第十代真慧上人が比叡山延暦寺から直接貰い受けられたと伝えられ、現在では高田にのみ伝承されるものです。
 さて、「報恩講式」は、本願寺第三年覚如上人の製作で、その子存覚が高田に贈進し、以来高田本山寺院では本山を始めすべての寺院で報恩講にはこれを拝読する習いとなりました。本山では報恩講七日間の、毎日四回にわたる勤行のうち、初夜勤行を報恩講式の形通りに勤めており、第一夜(一月九日)に初段を法主(又は法嗣)が拝読、第二夜(十日)は第二段、第三夜(十一日)は三段を維那職(式務長)が代読、第四夜(十二日)は初段に返って法主(又は法嗣)が読み、第五夜、六夜(十三・十四日)は二段・三段を維那代読、第七夜(十五日)は全三段を通して法主(又は法嗣)が読誦します。今回の公演は、この一月十五日の三段通読の作法を、ホール形式で初めて公開するものであります。
 式文は声明の部門の中では語り物に属し、後世の浄瑠璃音楽の祖型をなすもので、その曲調は一子相伝として伝えられて来ましたが、親鸞聖人歿後二百年の書写本に既に二重・三重の別が記され、四百年本には今日と変わらぬフシ型が附いていますから、“伝承五百年の響き”としても誤りのないものと思います。

 その声明としての特色について、専門の研究者の記述を引用します。

 高田派の講式は、その旋律の多様さにおいてきわだっている。もちろん日本声明に固有の「重」構造によっており、その「重」の変化が明瞭に唱え分けられている。第三段では、四種の「重」が現れ、そのうち三種までがそれぞれ中心音の上に短い5律(完全4度)と、しばしば延ばされる1律(短2度)の音が現れるが、最高音位の「重」では、この音程関係が変化し、中心音の上に2律の音が現れる。この際、直前に2律下降し、その音から上昇するため、4律(長3度)上昇が生じ、その響きが、きわめて強い印象を聴く者に与える。

「声明大系(法蔵館)」解説より

 これは三段のみについての解説ですが、初段・二段にも、ほぼ通じて言えるものと思います。
 ホールでの公演は、本尊に背を向け、参詣者(聴衆)に対面するという、御堂ではあり得ない形となって途惑いも多いのですが、お気附きの点は遠慮なく意見をお寄せ下さい。
 ホールの中に於いても、聖人追慕の念・念佛讃嘆の思いを溢れさせることができればと存じております。
 なお、本山での初夜勤行の装束は、色衣・五条・差袴が定格ですが、今回は特に、黒衣・墨袈裟・差袴という形式で行うことと致しました。これは一月十五日の初夜勤行後に勤められる後夜勤行(午後十一時より)の形を取ったもので、最も簡素な装束となります。

報恩講式について  法嗣 常磐井 慈祥

 「お式文」と言えば報恩講、報恩講と言えば「お式文」と言われるように両者は決して切り離しては考えられません。「お式文」は正式に「報恩講式」と呼ばれます。
 それでは、講式とはどういう意味でしょう。講式とは本来、講(法会・集会)を行うに際しての式次第のことです。これが後に儀式作法を定めたものへと性格が変わって、盛んに作られるようになりました。その代表的なものの一つが本願寺第三世覚如の作になる「報恩講式」なのです。
 「報恩講式」は親鸞聖人のご正忌に行われる報恩の集会である報恩講に際して読み上げられる表白文を中心に、勤行作法などを付け加えた内容になっています。最初の表白に引き続き、初段、二段、三段の三つに分けて親鸞聖人の徳を讃嘆してゆきます。高田派の「報恩講式」は拝読の複雑かつ独特な節回しで、他派とは著しくその趣を異にしています。
 しんしんと冷え込む伊勢路の冬の夜、御影堂の張りつめた空気の中に響きわたる「お式文」拝読の声は高田派の誇るべき文化遺産なのです。

声明について 高田短期大学学長・仏教文化研究センター長 栗原 廣海

 「声明」とは、仏教儀式で用いられる声楽の総称で、経文などを、昇降・屈曲の節をつけて仏前で諷誦することを言います。
本来は古代インドの五種類の学問分野をあらわす「五明」(声明・工巧明・医方明・因明・内明)の一つで、文法学や言語学、訓詁に関する学問を意味し、仏教声楽を意味する語としては「梵唄」「梵讃」などが用いられていましたが、中世の初め頃から「声明」が仏教声楽を意味するようになったと言われています。

 古くは、奈良の東大寺大仏開眼法会において種々の音楽が演奏され、そのとき声明も行われたと言われていますが、現在行われている声明はほぼ天台声明と真言声明の流れで、発達した音楽理論をもっています。
これらは鎌倉仏教の各宗派に影響を及ぼしただけでなく、平曲・謡曲・民謡・浄瑠璃など、単旋律の音曲をもつ日本の伝統音楽の源流ともなっています。「高田声明」も天台声明の流れを汲むものです。

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