報恩講 御消息発布式 開山聖人750回遠忌報恩大法会を厳修するにあたり
宗祖親鸞聖人は、弘長二年(一二六二)九十歳の生涯を終られ、浄土へお還りになりました。本年平成十九年は、聖人滅後第七四五回目の御正忌に当たります。古来、宗門におきましては、五十年ごとに聖人の御正忌を遠忌報恩大法会として厳修して参りました。来るべき平成二十四年は、正に七五〇回の御正忌に当り、四月六日(金)から十六日(月) までの十一日間にわたって大法会を営み、親鸞聖人の御恩徳の万一にも報い奉りたいと存じます。
折しも、宗門の大事業として、各寺院及び檀信徒の皆さん方の絶大な協賛を得、国・県・市の援助を仰いで平成十二年から始められた御影堂の大修理も、今や完成に近づきつつあります。明年の報恩講は、この大修理が成ったばかりの御影堂において執り行われる予定であり、皆さんと喜びを分かち合える日が目前に迫って参りました。
ひるがえってわが国の様相をかんがみます時、五濁悪時悪世界との聖人の仰せを、日に日に実感せざるを得ません、貪瞋邪偽の行いが日常茶飯のこととなって参りました。この有様がこのまま推移すれば、日本は滅亡するしかありません、国家の滅亡は外敵の侵攻によるのではなく、その前にその民族の心が滅んでおるのであります。
その私どもの心に、常に呼びかけ給うお声がある。そのお声のままに歩ませていただく道を教えて下さったのが親鸞聖人であります。そのお声は私どもの心に南无阿弥陀佛と呼びかけ給うのであります。
「如来の作願をたづぬれば 苦悩の衆生をすてずして 廻向を首としたまひて 大悲心をば成就せり」と『正像末法和讃』に示されたように、阿弥陀佛は、この濁悪の世に喘ぎ苦しむ私どもを、必ず救わんとして本願をおこされ、南无阿弥陀佛と呼びかけて、苦を抜き楽に至る道を完成して下さったのです。私どもの親たちもこの道を歩んで、阿弥陀佛と共に浄土から南无阿弥陀佛と呼びかけて下さるのであります。この道こそ日本人が日本の心を回復する道であり、この道を行くほか私を救う道・日本を救う道はありません。
思えば今日の社会の混迷は、寺院の機能が十全に働いていないことのあらわれではないでしょうか、日本全国の寺院がそれぞれ本来の機能を発揮していれば、こんな無様な姿にはならない筈です。高田派寺院は小数といえども、各住職が自覚的に念佛の一道を伝え、檀信徒また一致協力して聞法にいそしむならば社会は必ず浄化されましょう。
七五〇回御遠忌を迎えるに当り、宗門として今後百年の計を立て後顧の憂いなきを図らねばなりません。それには派内全寺院の活性化が急務でありますが、各寺院間の連係を強め、休眠寺院を掘り起して、新天地の開拓を推進することも極めて大切であります。寺院が常に念佛の道場として開かれ、人々のよき相談所となり、一級の文化の発信地となることを願って止みません。
又、明年四月には、第二祖真佛上人の七五〇回忌・第三祖顕智上人の七〇〇回忌を併修して「大恩会」として厳修致しますが、これは我々高田教団が聖人直弟の教団であることを更めて認識するよい機会になろうと思います。先人の歴史に学び、聖人直々のお聖教に親しむことによって、弟子として師を仰ぐあり方が聖人の念佛道であることを体得して参りましょう。
御遠忌まであと五年です。いたずらに現世をなげくことなく、念佛の息吹きによって地域社会に暖い空気を送り込みたいと切に念じます。
平成一九年一月一五日
第二十四世 鸞猷 花押
報恩講 御消息発布式より